展覧会情報はこちら
[ 焼きもの ]
ロシア〜ソ連の統治下におかれた時代に窯が途絶えたり、銅を酸化させてつくる緑釉の伝統的な色絵が失われたりして、あまり土着の焼きものは残っていない。
そんな中で、カヘティ州の山岳部トゥシェティで焼かれていた小ぶりの盃・ピアラを中心にジョージアらしい焼きものを見つけた。
ビアラはワインを飲む土の盃だそうだ。
伝統的なジョージアのワインはクヴェブリと呼ばれる素焼きの壷を土中に埋め、その中でブドウを発酵させるのでわかるような気もする。
これらは80~100年くらい前のもので、赤土の無地のものもあれば緑釉で絵付けしたものもある。
どれも適当にさらっと描かれていて、子ども作であろうものも発見。
形がどれも深めで、口が広めで、なにせ薄づくりなところが良いのだ。重ねると、カサッといい音がする。かなーーーり好み。
::: [ 木のもの ]
ジョージアに住んで8年の友人によると、山林が少ないせいか良い木の道具があまりない気がするとのこと。西部アチャラ地方、北東トゥシェティ地方、カヘティ地方などの山岳部に木工が多いようだが、好みのものはひじょーに少なめ。
ああっこれは...と思うものはざっくりと大きくろくろで挽かれた木皿や鉢。ナイフの跡があったりするのでお皿兼用まな板といったところだろうか。銘木というわけではないがカラっとドライなものを選んだ。そして繊細な紋様を木彫した箱。どれも大きな存在感ながら薄づくりなのがライトでいい風通し。
バスケットにはよくヘーゼルナッツの木が使われる。農作物を収穫したり保存したりするためのものだが、花器にもなりそうなコーン状のバスケットはワインの漉し器。綺麗に染まった葡萄色のその先に... アルミ。
:::
[ アルミ ]
アルミといえば…
私が一番好きな金属である。
なぜかジョージアにはなにかとアルミものが多い。例えばソ連時代に多く製造されたアルミ鍋は種類が多く、サイズや蓋のデザインがバライティに富んでいる。ペラっとしている分、熱伝導が早くて気軽に使えて良い。とはいえ、ある程度綺麗な状態の鍋を探すのは難しくて今回は2つだけ。宿に持ち帰って小鍋でお米を炊いてみた。ちゃんと美味しく炊けるし、焦げ付かない。柔らかく手で加工しやすいアルミは扱い易いから、重宝されていたのかも?と勝手に推測している。
アルミの変わり種。
よく見るヘーゼルナッツのバスケットをそのままアルミで代用したもの。非常にバランス良く作られていて、やっぱり軽い、上手い。ジャガイモなど野菜収穫用と思われる。アルミ、代用品、バスケット。好きなものが詰まっている。
:::
[ ガラス ]
1950年代初期に多く生産された耐熱のゆらゆら吹きガラス。極ふつうなのだが幾つあっても良いやつ。
中には揺らぎすぎているものもあり、昔ゆえの個体差満載。トルコから伝わったチャイを飲むものらしく、本来はホルダーにセットして使う。
ロシアの優美なガラスは時々見かけるが、ジョージア由来はないなあ…と思っていたら、瓜形のガラスを見つけた。
大きなガラスはコンポートやリキュールの保存用であることが多い。どうして瓜形なのかはハテナだが、ジョージアのかたちは曲線を描いていても硬くて堂々カッコいい。
:::
[ ウール ]
毛織物で有名なトゥシェティ地方に住む山岳民族が寒さしのぎのために真冬は山を降りてきていると聞き、乗合いタクシーに乗って近くの村まで行ってみた。
行った先で、ふわふわ柔らかそうな原毛で編んだルームシューズや靴下を発見。
それらはパンキシ渓谷(チェチェン人の隠れ里)の羊で紡ぎ、編んだものらしい。
良さげな靴下ないかな〜とウロウロ。
ほどよく羊感が残る糸で編んだ靴下を見つけた。まだ羊のにおいが残っている。
小さな町工場で機械編みしているらしくやや薄手に編んである。
カーキ色がとんでもなく、好み。
旅の間じゅうタイツの上に二重で履いていた。ルンルン。
羊といえばコーカサスにも敷物があり、さまざまな民族のものが入り混じっている。トライバルラグの中では一見特徴がなく、人気のなさそうな、しかし私的好みのチェックや花柄の敷物を選択。
特にお気に入りはアゼルバイジャンの日除け。太陽を意味する模様の縁取りがしてあり、端中央に瞳らしき刺繍が施されている。このマークが劣化するとツキが落ちてしまうとか。
祈りのための装飾が効いていて、ちょうど良い。本来はものをつくる、表すという行為は形而上的なことなのかもしれないなあ...とふと思った。
:::
[ USSRとグルジア ]
樹脂のトレイとカトラリー。70年代トビリシに窯元があったという水玉の陶器。食卓に欠かせないブレッドバスケット。ハリネズミの灰皿。これらは2015年にジョージアと改名する以前のグルジアのもの。ソ連に統治される以前にはロシア帝国下におかれ、自国のものづくりの文化はこの流れの中で衰退したようだ。
種類も数もあまり残っていない中でグルジアものを見つけると嬉しい。
ソ連(USSR)の国々には共通して作られていた製品があるようで、それらを手に取ると「ソビエトユニオンのものだ」と教えてくれる。お隣のアルメニアに行った時も同じものが売られていた。
USSRものといえば。縫製工場跡から出たデッドストックの洋服を無種類か選んできた。鮮やかな色の花柄やドット、ストライプ。縫製は簡単なものだが、柄やかたちが可愛い。
ジョージア人は正教徒が多いお国柄か、黒が好きなイメージで「とりあえず黒」といった感じに無難に色を選んでいるような気がする。石造りの古い建築や街並みを大切に残していることもあり、街の風景には色が多くはない。意外にもこんなにも華やかで楽しい時代もあったのだなあ。
ジョージアにはソ連時代につくられた突出してアバンギャルドな建築が残っている。いま動いている鉄道もテレビ塔も当時のものだとか。 現代では建てられなさそうな奇抜でカッコいい建物が多く見どころの一つになっている気がするのだが、昨今の戦争のこともあり次々と取り壊す動きもあるようだ。 ロシア帝国〜ソ連時代は傷痕であり繁栄の記憶でもあると思うのだが、いまのジョージアのからだの一部であることもまた、現実。