壷田和宏、亜矢さんと黒原原土

2023/11/17





久しぶりに壷田和宏、亜矢さんの工房へ。この日は絶好の秋日和で高千穂から見える阿蘇が最高でした。
そんな中で見る作品もひと際キラキラしていました。とにかくここは空気が綺麗。
少しお会いしない間に穴窯が壊れて、登り窯になっていました。
息子さん達に手伝ってもらって建てたという新しい窯で焼いた作品も出来栄え上々だそう。来春にどっさり当店用に焼いていただこうと思い、
とりあえず今の空気を吸いに行った次第。

前回の展覧会では炭化焼き締めをテーマに作品を展開していただきました。
様々な土や釉薬を幅広く使った炭化焼き締めをリクエストしたのは、壷田さんが暮らす高千穂・黒原(くろばる)で採掘した土が超個性的で面白かったから。
前回はグレー、ブルー、ピンク、ブラウンのグラデーションが出て、恐竜の卵のような貫入が入っていました。
ブレンドせずにあえて単体(原土)で土を焼いたものでしたが 「温度ではなく熱量を大切にした」と言われていたのが印象的で、妙に腑に落ちたのを覚えています。
圧力釜のようなイメージでしょうか?
テクニックだけでなく、私が価値を感じているのは他ならぬ人の熱量=エネルギーである気もしているこの頃です。
地層に走る黒原原土を見た時、明らかに異質な感じがして採掘したそうですが、
思いもよらず、それは白粉のように綺麗でキメ細やかなパールホワイトの土でした。マジック。
ひとまず、少し仕入れをして京都に戻りました。来年、何をどう焼いてもらおうかなあ〜と考え中です。

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もうすぐ10年

2022/09/05

当店は2012年10月12日にオープンしました。
つねにドタバタしていて上り下がりの多い日常を送っているがゆえ、10年目といっても特別に変わり映えはしませんが、年は経ったなあとしみじみ感じています。
始めた当初は10年ぐらい続けれたら良いほうかな、ぐらいに思っていました。軽く考えていたのは、まず前職で担当していた物販の仕事をそのまま自分流にやってみたらどうなるか、実験してみたかったから。もう一つは食い扶持を作りながら、その間にもっと自分の好きなこと・やりたいことを見つけられたら良いなと思っていたから。しかしながらあっという間に10年経っても迷走するばかりで、何もなし得ないまま時が過ぎてしまいました。
もう、こうなったら納得いくところまでこの仕事を続けようと思ったのがコロナで休業していた時。


話は変わりますが、当店の開業当初から、正確には前職のお勤め時代からのお客さまであるF夫妻が仕事を辞めてカフェ"Ottè"(オッテ)を始めることになりました。今まで開業の予定は一切なかったそうですが突然の方向転換。人って思い立った時の勢いとか運の巡り方がすごいもので、傍目に見ていても良いお店になるだろうな、と思います。直感的にそう思うのは、お二人がずっと自分たちのために好きなことに没頭してきたから。イタリアが好きで、pizzaが好きで、エスプレッソが好きで...。何度もイタリアを旅して美味しい食べもの、美しいものを見て集めてきたのだろうと思います。
現在は準備中で、ご主人はこれからpizzaを焼く石窯をつくるそう。奥さまのイタリア菓子を自己流にアレンジしたレシピも今まで食べたことのないタイプのお菓子でとても美味しい。そして凝りに凝ったエスプレッソも美味しい。全部美味しい...。
目的を持たずして好きなことに凝って情熱を注げるのは、肯定的な"好き"エネルギーの純度の高さだなあと思うのです。


また話は戻りますが、私はついに好きを仕事にする、ということが実は出来ませんでした。ただ振り返ってみると働くことが好きでした。たまたま縁がありついた小売の仕事ですが、どうしたらつまらない日常をもっと楽しく働き、生きていけるかを考えています。
どうしても性格上、嫌じゃないことを回避する発想からことを始めますが、ただ好き、という直球のエネルギーにはシンプルに勝てないな...と思ったのでした。そんなことがちょっと淋しく、羨ましくもあります。
たまには打ち消し戦法は止めて、自然に浮かんでくる好きなこと、好きな人のことを考えてみようと思った、秋のはじまり。

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