壷田太郎 / Taro TSUBOTA


私は壷田家の追っかけと言っても過言ではないだろう。ここ10年、ご両親である和宏さんと亜矢さんの作品、しいては人間そのものにどっぷり浸かってきた。その息子である太郎さんは、ある時ふと登場した人物で、焼きものを通じて話をするようになり、そうこうしているうちに一緒に仕事をすることになった。

高千穂で1年間、ご両親のもと焼きものを学んだのち、旅人のような時間を過ごし、今は伊賀・ゆうくりだにで制作している。融栗谷はトトロが住んでいそうな小さな里山。かつてご両親が切り拓いた場所でもあり、影響を受けないはずがない。すべてはそこからはじまったのだが、受け継がれたものの中から芽生えた、新しい流れを感じた。



シンプルな小皿を素地にして焼かれた、たくさんの釉薬テストピース。それがはじまりだった。工業高等専門学校で材料工学を学んだというだけあって、実験好き。身近にある土や砂を採ったり、混ぜたりして、窯の中で起こる化学変化を楽しんだピースだ。見込みが平らで、少しだけ縁が立ち上がったかたちは、身近にある瓶の底を型にしたそうだが、図らずも好み。あまり考えずに闇雲に焼いてみたら?と言うと、彼は本当に焼いてきた。たくさんの成果物を並べながら、いろいろなことを話したものだ。それは私たちがなにが好きで、どんなことが嫌いか──終始そのようなことだった。

ある日、コップをひとつ持ってきてくれた。お気に入りのガラスコップで型を取り、口元や底の柔らかなラインがつるんと現れるように工夫されている。90%ガラス質で出来ている陶土で焼いているから、うっすら透ける、まさにガラスのコップ。学生時代にガラスを使った研究課題が楽しかった思い出や、素材としての美しさに憧れがあることを話してくれた。

この夏は薪窯だけでなくガス窯でもたくさんコップを焼いた。同じものはなく、どれが完成でもなく、すべては実験の途中かもしれない。窯出し後の融栗谷は、小さな生きものが集まってきたように賑やかで、とても静かだった。自然発生したものは自然へとかえっていく。光にかざして見た憧れのかたちは、金すくいの末の結晶のようにキラキラしていて、雄大な自然と同じように美しく存在していた。




略歴)
壷田太郎
Taro TSUBOTA

1994年 三重県に生まれる
2020年 伊賀に住みはじめる
2023年 窯をつくる


Archive)
2026.8.8(土)- 18(火)→


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photo : Kazumasa HARADA
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